【2級ガソリン:動力伝達装置】
このページでは、動力伝達装置の過去問題を掲載しています。
分かりやすくお伝えするため、要約により構成しています。
覚えやすさを優先しているため、独自の解釈があったり言葉足らずの部分もあるかと思いますが、試験に合格することを第一の目標としているためご理解ください。
正式な試験問題と解答は、日本自動車整備振興会連合会のホームぺージよりご確認ください。
令和7年度第1回 No.18
【問題】
回転速度差感応式の差動制限型ディファレンシャルについての問題です。
間違っている記述を選択します。
まずは、それぞれの構造と特徴を押さえます。
差動制限型ディファレンシャル(以下:LSD)には機械式と電気式があり、機械式には回転速度差感応式やトルク感応式(ヘリカル・ギヤタイプ)がある。
回転速度差感応式はビスカス式とも呼ばれ、LSD内部のビスカス・カップリングの作用によって、トルク感応式は、LSD内部のヘリカル・ギヤの摩擦力によって差動を制限する。
目的は、“高回転側から低回転側に大きな駆動力を発生させる”こと。
LSD内部には、通常のディファレンシャル部分に加え、“高粘度のシリコン・オイルと複数のインナ・プレート、アウタ・プレート”が取り付いている。
これを“ビスカス・カップリング”という。
左右輪の回転速度に差が生じたとき、インナ・プレートとアウタ・プレートに回転差が発生し、シリコン・オイルの作用によって高回転側から低回転側にビスカス・トルクが伝わり、低回転側に大きな駆動力が発生する。
高粘度のシリコン・オイルは“はちみつ”のようなもので、容器に入れた“はちみつ”を箸でかき回していくと、次第に容器ごと回り出す現象と同じイメージで考える。
このシリコン・オイルは、定期交換が指定されているデファレンシャル・オイルとは別物なので勘違い注意。
デファレンシャル・ケース内は、ピニオンやサイド・ギヤと呼ばれる複数のヘリカル・ギヤで構成されている。
左右輪の回転速度に差が生じると、各ギヤのかみ合い反力によって、ピニオンをディファレンシャル・ケースに押し付ける力が発生する。
この摩擦力によって、ピニオンとディファレンシャル・ケースが一体で回転しようとすることで、高回転側から低回転側に駆動力が伝えられる。
(1)について
左右輪に回転速度差が出たときにビスカス・トルクが発生します。
イメージしやすいのは、片輪が側溝などに脱輪し、脱輪した方の車輪だけが高速で回転しているような場合です。
(2)について
“大きいほど大きな”と、つなげて覚えておきましょう。
(3)について
LSDの目的は、低回転側に駆動力を発生させることです。
読み間違いに注意。
(4)について
文章のとおりです。
本来デファレンシャルは、旋回時など左右輪の回転速度差を調整するための差動装置です。(右旋回時:右輪回転低い、左輪回転高い)
しかし、通常のデファレンシャル(オープン・デフ)では、片方の車輪が回らなくなると、もう片方の車輪のみが回り続ける構造のため、状況によって差動を制限するものがLSDです。
【正解】(3)
デファレンシャルを説明するのに脱輪を例にしていましたが、実際の車両の走行では、よほどきれいな直線でない限り、左右輪に回転差が発生していると言われます。
特に高速旋回時は遠心力が強く働き、右に旋回しているときは極端に見ると車両右側が浮いた状態になります。
左輪は接地し右輪が浮いていると考えると、これは脱輪したときと同じようになり、設置している左輪に駆動力が発生しづらくなります。
そのため、スポーツカーにはLSDが標準装備されることも多くあり、その中でも回転速度差感応式はシリコン・オイルを使用しているため、ギヤ式に比べ差動制限の効きがマイルドだと言われます。
令和7年度第1回 No.19
【問題】
電子制御式AT のロックアップ機構についての問題です。
間違っている記述を選択します。
(1)ロックアップ・ピストンの衝撃吸収に関する記述
(2)ロックアップ・ピストンの構造に関する記述
(3)ロックアップ・ピストンの役割に関する記述
(4)ロックアップ・ピストンの動力伝達に関する記述
主にAT車に使われているトルク・コンバータは、ポンプ・インペラ(以下:ポンプ)がエンジンにより回され、その回転はATFを介してタービン・ランナ(以下:タービン)へ伝えられています。
ATFを介して動力が伝わるため、わずかながら動力ロスが発生し、仮にポンプが3000回転している場合、タービンはそのまま3000回転とはなりません。
しかし、初めから直結状態にしておくと、車両の抵抗によってエンジン・ストールを起こしてしまうため、ある程度回転速度が上がってからでないとロックアップは締結できません。
ロックアップは、ロックアップ・ピストンの摩擦材をカバーに押し付けることで行われます。
ロックアップ解除時は、ATFの油圧によってロックアップ・ピストンがカバーから離れた状態になっており、締結時にはロックアップ・ピストンの摩擦材側のATFをドレーンすることで、油圧の力により摩擦材をカバーに密着させています。
ロックアップ・ピストンは、タービンにスプラインかん合している(機械的につながっている)ため、ロックアップが締結すると、エンジン回転→カバー→タービンへと動力が伝わるようになります。
また、ロックアップ・ピストンには、エンジンのトルク変動を吸収・緩和するためのダンパ・スプリングが組み込まれています。

(1)について
エンジンのトルク変動がダイレクトにかかる部分になるため、その衝撃を吸収・緩和するためのダンパ・スプリングが組み込まれています。
(2)について
どこにスプラインかん合しているのかを押さえる。
(3)について
ロックアップはポンプとタービンの直結装置。直接動力を伝えます。
(4)について
ロックアップ・ピストンがカバーに密着することで、カバーの回転が直接タービンに伝わります。
ロックアップ・ピストンがカバーに密着すると直結状態になります。
読み間違いに注意しましょう。
【正解】(4)
【過去と現在】
ロックアップの構造を見ていると、できるだけ早めに直結状態にした方がいいですよね。
昔の車のロックアップ制御はONかOFFだけだったので、ある程度の速度域(例:60km/h以上)にならないと直結状態にできませんでしたが、現在の車両は制御の精度が上がり、じわっとON→しっかりONと細かい動きが可能です。
この制御はフレックス・ロックアップと呼ばれ、低速域(例:10~20km/h)からじわじわロックアップを開始しています。
【エンスト トラブル】
FR車でロックアップが影響し、“減速時にエンストする”ことがあります。原因は“ATF量の不足”で、ATFを規定量に調整するとトラブルは解消。
原因はこうです。
走行中にロックアップ制御がONにしたあと減速すると、ロックアップ制御はOFFになりますが、ATF量の不足によりロックアップ・ピストンをカバーから離すための油圧が確保できず、ロックアップが効いたままになることで、エンジン回転が車の抵抗により妨害されエンストするというものでした。
この事例からは、構造理解の重要性やATFの点検・管理の必要性を学びました。
令和7年度第1回 No.23
【問題】
CVTについての問題です。
正しい記述を選択します。
(1)プライマリ・プーリの作動に関する記述
(2)スチール・ベルトの動力伝達に関する記述
(3)プライマリ・プーリの作動に関する記述
(4)CVTの制御に関する記述
CVTはContinuously Variable Transmissionの頭文字で、無段階変速機のことです。
CVT内部は、2つのプーリをスチール・ベルトでつなぐ構成になっており、プーリにかかる油圧を制御しプーリの溝幅を変えることで、スチール・ベルトの接触半径を変化させています。
ギヤによる変速ではないため変速に切れ目がなく、減速から増速状態までなめらかに変速をしていくことが可能です。

(1)について
図のとおり、プーリに油圧をかけると溝幅が狭くなり、スチール・ベルトの接触半径は大きくなります。
(2)について
スチール・ベルトは、エレメントの圧縮作用(エレメントの押し出し)によって動力を伝達しています。
(3)について
プーリ比がLowのときはプーリの油圧を抜き、遠心力によって溝幅は広くなります。
(4)について
L(Low)レンジは強い駆動力やエンジン・ブレーキを得るため、プーリ比を最Low付近に制限した制御になります。
油圧と溝幅の変化の問題で間違ってしまうことが多いです。
プーリの直径を変えることはできません。
あくまでも、ベルトのかかる位置で接触半径を変えているのです。
ペンを親指と人差し指で持ち、指に力を入れて近付けるとペンは持ち上がり、指を離すとペンは下に落ちてきます。
ペンをスチール・ベルトに見立て、油圧を指の力と考えると理解しやすいかもしれません。
【正解】(3)
CVTにはCVTフルードが使われますが、高い油圧制御が行われている多、有段変速のステップATよりも過酷な環境です。
スチール・ベルトが切れてしまったり、擦り減った鉄粉による変速機不良の事例をこれまで見てきました。
ミッションのことを考えると、メーカー指定では無交換や10万km交換になっている場合でも、4年または4万kmくらいのスパンで交換してあげた方がいいでしょう。
