【電動パーキング】学校では「仕組み」を学ぶ。現場では「使い方」を学ぶ。
自動車整備士の学校では、電動パーキングブレーキ(以下:EPB)について学ぶ機会があります。
モーターを使ってパーキングブレーキを作動させる仕組みや、ECUによる制御、オートホールドとの関係など、現在の自動車整備には欠かせない知識です。
しかし、実際に整備の仕事をしていると、
「仕組みは知っている。でも、この車はどう操作すればいいんだ?」
という場面に出会うことがあります。
今回実際にクラウンクロスオーバーを整備していて、まさにそんな場面に遭遇しました。
そして、この経験から改めて感じたことがあります。
学校では「仕組み」を学ぶ。
現場では「使い方」を学ぶ。
どちらも整備士にとって大切な知識です。
学校では「仕組み」を学ぶ
電動パーキングブレーキの構造と制御
自動車整備士の学校では、EPBについても、その構造や作動の仕組みを勉強します。
従来のパーキングブレーキのように、レバーやペダルを操作してワイヤーを引っ張るのではなく、電動モーターなどを利用してブレーキを作動させる仕組みです。
単純にモーターを動かしているだけではなく、車両の状態をECUが判断し、シフトポジションやブレーキ操作など、さまざまな情報をもとに制御しています。
国家試験の勉強でも、自動車の電子制御について学ぶ機会は増えています。
つまり、「EPBはこういう仕組みで動いている」という知識は、整備士として非常に重要です。
知識は整備士の土台になる
まず、誤解してほしくないところです。
「学校で習うことと現場は違う」という話をしたいわけではありません。
むしろ逆です。
学校で学んだ知識があるから、現場で起きていることを理解できます。
例えば、EPBが作動しない車両を診断するとき。
モーター、ECU、スイッチ、電源、通信、作動条件などの知識がなければ、どこから調べればいいのか分かりません。
学校で学ぶ構造や理論は、現場で故障を診断するための土台になります。
だからこそ、学校で勉強することには大きな意味があります。
現場では「使い方」を学ぶ
イグニッションOFFで自動作動するEPB
ここからは、今回実際に体験した話です。
2023年式のクラウンクロスオーバーでは、通常の操作で電源をOFFにすると、EPBが自動的に作動します。
普段の使用であれば、とても便利な機能です。
車から降りるときに、毎回パーキングブレーキを操作する必要がありません。
しかし、整備の現場では話が変わります。
例えば、
「ちょっと車を動かしたい」
「ブレーキ関係の点検をしたい」
「検査や測定のためにブレーキを解除しておきたい」
「作業中に何度も電源をON・OFFする」
といった場面では、電源を切るたびにEPBが自動で作動すると、少し面倒です。
そこで、「この自動作動を止める方法はないのか?」と考えました。
他車との違い
そもそも、シフトポジションをパーキングに入れると自動でEPBが作動する車は多くあります。
その場合は、シフトをパーキングに入れてEPBが作動したあとブレーキを踏み、EPBを解除してからイグニッションOFFにすることで、EPBを解除したままの状態にすることができます。
今回もそのパターンだと思い同様の操作をすると、一度解除したEPBがイグニッションOFFにすると同時に再び作動してしまい、イグニッションOFF時にEPBを解除することができませんでした。
実際に試して分かった操作方法
メーカーの整備マニュアルやwebで情報を調べましたが、このパターンのEPB解除方法については見つけることができませんでした。
そこで実車を使っていろいろ試していくと、EPBスイッチを押し下げたままパワースイッチをOFFにすると、その回はEPBが自動作動せず、解除した状態を維持することができました。
つまり、
EPBスイッチを押し下げる
↓
そのままパワースイッチOFF
↓
EPBが自動作動しない
という操作です。
これは、車両を実際に触って試してみなければ、なかなか気づきにくい操作だと思います。
ここで重要なのは、「電動パーキングブレーキの仕組みを知っているか」だけではありません。
「この車は、実際にどう操作すればいいのか」を知っていることも、整備士にとって大切な知識だということです。
ただし、安全には十分注意する
もちろん、パーキングブレーキを解除した状態で車両から離れることは危険が伴います。
今回のような操作をする場合も、平坦な場所で作業し、必要に応じて輪止めを使用するなど、車両が動き出さないための安全対策を必ず行う必要があります。
また、今回紹介した操作がすべての年式で同じように使えるとは限りません。
「この車で確認できた操作」として捉え、実際の作業では車両の仕様や整備要領を確認することが大切です。
現場で必要なのは「なぜ?」を考えること
なぜこの操作が必要なのか
整備士として仕事をしていると、「この操作をしてください」「このスイッチを押してください」という指示を受けることがあります。
もちろん、その通りに操作することも大切です。
でも、そこで一歩踏み込んで、「なぜ、この操作が必要なんだろう?」と考えてみてほしいと思います。
今回のEPBであれば、
「なぜ電源OFFで自動作動するのか?」
「なぜ整備中には解除しておきたいのか?」
「どんな点検や検査で、この状態が必要になるのか?」
と考えることができます。
こうやって考えると、単なる「操作方法」が、整備の知識としてつながってきます。
「やり方」だけではなく「理由」まで考える
整備士にとって、作業手順を覚えることは大切です。
しかし、「このボルトを外す」「このスイッチを押す」「この測定をする」という手順だけを覚えていくと、少し条件が変わっただけで対応できなくなることがあります。
一方で、「なぜこの作業をするのか」まで理解していれば、初めて見る車でも応用が利きます。
これが、現場で求められる「考える力」だと思います。
学校の授業も「現場目線」で見ると変わる
「現場ではどう使うんだろう?」と考えてみる
ここは、これから整備士を目指す学生の方に一番伝えたいところです。
授業で電動パーキングブレーキについて勉強するとき、「試験に出るから覚えよう」だけで終わらせるのは、少しもったいないと思います。
例えば、
「この機能は現場ではいつ使うんだろう?」
「整備するときには、どういう状態にする必要があるんだろう?」
「故障したら、整備士はどうやって点検するんだろう?」
そんなことを考えながら授業を聞き、先生に質問してみてください。
同じ内容を勉強していても見え方が変わり、きっと将来の成長を早めてくれます。
実習でも「その先」を考えてみる
実習も同じです。
先生から「この部品を外してみよう」と言われたとします。
そこで単純に「外し方を覚えよう」だけで終わるのではなく、
「実際の整備では、何のためにこの部品を外すんだろう?」
「この部品を外す前に、何を確認する必要があるんだろう?」
「現場では、どんな工具を使うんだろう?」
と考えてみる。
そうすると、実習が単なる作業練習ではなくなります。
現場を想像しながら実習する。
これだけでも、学校で過ごす時間から得られるものは大きく変わると思います。
学校と現場は別物ではない
教科書の知識は、現場で完成する
学校で学ぶ知識と、現場で身につける経験。
この2つは別物ではありません。
学校で学んだ構造や理論があるから、現場で起きていることを理解できます。
そして現場で実際に車を触ることで、「学校で習ったあれは、こういうことだったのか」と、知識がつながる瞬間があります。
その瞬間が、整備士として成長するきっかけになるのだと思います。
知識を「使える知識」に変えていく
国家試験に合格するための知識。
これは整備士になるために必要です。
でも、整備士になった後に必要なのは、その知識を現場で使う力です。
だからこそ、学生のうちから、「この知識は現場のどこで使うんだろう?」という視点を持って勉強してみてほしいと思います。
そうすれば、学校で学ぶ一つひとつの知識が、ただの暗記ではなくなります。
まとめ|学校では「仕組み」を学ぶ。現場では「使い方」を学ぶ
今回、クラウンクロスオーバーの電動パーキングブレーキをきっかけに、改めて感じたことがあります。
学校では、電動パーキングブレーキの構造や制御を学びます。
一方、現場では、
「この車はどう操作するのか」
「この作業ではどんな状態にしておく必要があるのか」
「なぜ、この操作が必要なのか」
ということを学びます。
どちらが大切という話ではありません。
学校で学ぶ知識が土台になり、現場での経験によって、その知識が「使える知識」になっていく。
だから、これから整備士を目指す人には、授業や実習の中で少しだけ視点を変えてみてほしいと思います。
「これは試験に出るから覚える」だけではなく、「これって現場ではどう使うんだろう?」と考えてみる。
その視点を持つだけで、同じ授業、同じ実習でも、きっと得られるものは変わります。
学校で学んでいる今だからこそ、現場を想像して勉強してみてください。
そして現場に出たとき「学校で習ったことが、ここでつながった」と思える瞬間が出てくるはずです。
このブログでは、そんな「学校で学ぶ知識」と「現場で使う知識」の橋渡しができるような記事を、これからも発信していきたいと思います。
※今回紹介した方法は、私が実車で確認した操作です。
令和7年式のBF1プレリュードも同じ要領で解除できました。
車種や年式によって仕様が異なる可能性があります。
また、安全のため、平坦な場所で車両が動き出さないことを十分確認したうえで実施してください。
